small article on the medium of music. - vol.1

「音楽の媒体が化けるとき」vol.1

 SONY UDA-1の販売が後継機をリリースすることなく生産終了になる。ソニーらしい良い製品だったのだが、一代限りで終焉を迎える。残念だ。一方で、このことが意味するのは、家や部屋は音楽を聴く場であるという従来の「消費される音楽のトポス」が大きく変化している最中に僕らはおかれていることではないか。

 音楽は科学技術の急速な発展と軌を一にするように、近代以降にメインストリームとなったその媒体の物質性を脱ぎ捨てて、不可視のデジタルデータと化していくという非物質性の存在へと変化した。平たく言えば、音楽の商品化のさらなる合理化だ。それは悪いことではない。そんな音楽が商品化される市場の物理的変化を受けて、音楽を聴く人々は物質性に強固に囚われていた聴取形態を家・部屋の外側へと解き放つ。音楽を売る者も享受する者も、取り巻く環境が変化すればそれに対応すべく変化をいとわない、それが生存のために要求される。生物学の一丁目一番地を敷衍させればたやすく読解できる音楽の状況だ。(その一方で、その流れに対するアンチとして決して物質性を放棄せず、そこに新たな可能性を見出していくアーティスト―デストリビューター―リスナーも存在していくだろう) 

 またそれは、「永遠に続く表現媒体」の存在可能性も同時に否定する。〔vol.2へ〕