"Sansui-Tone" actuated again!

 ここ最近、昔に失ってしまったモノやコトを取り戻そうとしている僕がいる。それがしてはいけない浪費につながってしまっているのが忸怩たる所以なのだが。でも、――「サンスイのアンプはやっぱりイイよね!」と近所に触れ回りたい気分なのも事実なのだ。

 現住居の空間の物理的及び環境的、また金銭的要因により制限せねばと、いろいろと自主規制している。よって、オーディオ類の機材もそれに合わせて、比較的サイズの小さいモノを選んでいる。いわゆる「ミニコンサイズ」のモノだ。必然、サンスイのアンプもミニコンサイズで発売されていた機種――A-α7、A-α9、そしてA-α77――を入手した。

 なかなかにオークション市場に出回らないので、選択の余地がかなり限定される。出品されたら出品者の値付けを――「高すぎる」と思っても――受容しなければ先に進めないのが現実だ。だが、どんな小さなスピーカーでも容赦なく鳴らしてくれるサンスイ製のアンプは、そんな現実を僕に受容させ、行動させる存在なのだ。

 そうこうして手に入れた山水電気製のアンプの音を聴いてしまうと、どうにも納得させられてしまうのだ。これまでに使ってきた機種を順にあげると……〈AU-D707X DECADE〉〈AU-α607DR〉〈AU-α607NRA〉の3機種だが、いずれも当時愛用していたJBLの4311A-WXを軽々とドライヴしてくれた。そして、〈音楽〉を聴かせてくれた。分析的な「音」ではなく、総合的な意味での〈音楽〉。欠点がないわけではないが(アンチ・サンスイの方々の言説を待つまでもない)、サンスイ・トーンで奏でられる音を聴くと楽しくなってしまうのだ。

イメージ 1
イメージ 2
イメージ 3


 それは、再び、ミニコンポの一部を構成するアンプとはいえ、山水のアンプを手に入れようとするのは、僕の気分に寄り添ってくれる〈音楽〉を聴きたいがためだ。はじめて山水のミニコンポ"アルフ・シリーズ"のアンプであるA-α7を手持ちのスピーカーにつないで、そのシステムの音を聴き、思った。サンスイ・トーンだと。山水電気のメインストリームではない機材にも一貫した哲学がその基底にある。そんな人間くさい音楽用製品を製造していたのが山水電気であり、僕が求めるサンスイ・トーンで音楽を、スピーカーを通して鳴らしてくれるサンスイブランドのアンプなのだ。

 しかし、現実社会のあり方の中では、そのような、悪く言えば「頭の固い」モノづくりの企業は市場から退場させられる。山水電気の末路も例外ではなく、1999年を最後にその哲学に基づく製品のリリースは止んだ。紆余曲折を経て現在もブランド名は他企業によって受け継がれているが、その下にリリースされている製品は、もはやあのサンスイ・トーンを聴かせる製品ではない。

 だが、一度は手放してしまった山水電気製のアンプリファーの音がいま手元にある現実を、誰も掠め取ることはできない。

イメージ 4
イメージ 5
イメージ 6

〔了〕