full of few things

 幾晩か続けて明かしながら作成していたプチSの後期テキスト原稿をあげる。メールに載せて送付する。作成中は現代文の通常講義用テキストとテストゼミ用の2種類を同時並行で作りながら、小論文のテキストも作っていたので、頭の中は大混乱。小論文は「論理構成」「書き方」「テーマ解説」「演習問題」(当然オリジナル問題作成作業付き)を絡めながらだから、更に大混乱。ついでにMの夏期通い合宿の講義も担当していたので、またまた大混乱。薬なんていくら飲んだって追いつきやしない。しかし、大学受験レヴェルごときでこんな風になっている自分に限界を感じる。ホント、存在価値、なし。
 なんだかな。でも、何とか仕上げて送った。これから夏期講習でかの地を訪れた際にゲラをチェックして、それで終了。ちょっと工夫を凝らしたので後期の講義が少し楽しみである。
 お盆の時期ではあるが、稼ぎ時なので実家に帰ることはない。来週、仕事で実家の近くへ行くのでその時でも、と一瞬思うが、次に帰る時には自分はお骨になっていた方がみな幸せなので、そのまま東京へ帰る予定である。金のない奴は存在価値なぞない。

 自分、おつかれさん。ご褒美は、ヱヴィス、2本。

 Mの集中講義では、Mの卒業生が通っている大学の資料を見せた。生徒、みな興味深々。いま行っている受験勉強が単に入学許可の合格/不合格を決めるような知識テストではなく、大学に入ってから講義を理解するのに必要であることを認識しただけで顔色が変わる。テキストに向う姿勢が能動的になる。

 ソフトバンクのコマーシャルフィルムを見るたびに殺意が芽生える。犬は嫌いだ。昔、子どもの頃に飼っていた奴、犬太郎以外は。お前だけは許す。思い出すたびに泣きそうになる。ゴメン。まともに世話をしなくて悪かった。なので、ソフトバンクは一生使わない。でも、ウェブのプロバイダーはYahoo!BB。まさに消費社会に翻弄されまくりの僕である。こんなことに気づくときはたいてい、薬を増量しなくてはならない時間だ。

 最近、帰り道でも殺意を抱くことが多い。特に、銀座駅での乗り換えの時にである。日比谷線に乗り換えるために降りる際、疲れ切った表情のサラリーマンや、道を譲るという概念などこれまで一度も教えられない環境で育ってきたようなネクタイをゆるめに締めた若い人間がドアの前に立ちふさがることが多い。僕は避けない。そのまま、ぶつかる。というよりも、ぶつかってあげる。他者があなたにいつも道を譲るとは限らない。僕は道を塞ぐ者たちにそれを伝える。誰もが疲れ切っている。あなたも、僕も、疲れ切っている。みな、同じ条件だ。それを伝えるために、あえて僕は避けない。僕のカバンには重めのパソコンが入っていることが多いから、鳩尾に入ったら結構痛いだろう。でも、あえて、入れる。その場にしゃがみこむのと、僕と喧嘩するのと、その電車に乗って一刻も早く家に帰るのでは、どちらが良いのか。ほとんどの人間は不満気な顔で電車に乗り込み、新宿・中野・荻窪方面へ向っていく。
 それだけ、彼らは疲れているのである。僕はまだマシな方だ。でも、いつも優しい顔をするのはやめることにした。優しくするのはやめ。優しくするのは自分が選んだ人だけにすることにした。こういう風に書くと誤解されそうだが、自分が誰かに優しくされ、なおかつ受容されることは全く期待していない。というよりも、ありえないし、そんな人ではない。とうの昔にそんなことがこの世界にあることを信じることはやめた。

 ピート・シェリーではないが、この世界に愛があるという大人が絵本で騙しながら子どもに教えるようなことは一切考えていない。

 いつか、喧嘩になって、ホーム下に突き飛ばされてバラバラになれれば、僕はそれで本望である。鉄道会社に補償金を払う必要もなく、痛いと言う間も、感じる間もなく死ぬことができる。戦場での悲惨さとは較べようもない苦しみだが、それで消えれば何の問題もない。安く済む。人生、いっちょあがり。

 死んだらどうなるのか。五木寛之のように考えて生きることはできない。町田康のようにもがいた結果が金になるわけでもない。このように、僕の内にも周りにも何もない。あるのは虚無と無能さだけある。それは、これまでの行動の結果であり、自業自得というやつである。誰の責任でもない。何の才能も醸成できなかった無能な自分がすべて悪いのである。

 自分の命がどこまでもつか、最近そればかり考えている。自分の求めることをびた一文実現できないような低脳・低能の自分をどこまで永らえることができるのか。まったく楽しみである。

 ある人に言われた。「自分を低能と言うのは止めて下さい」。
 基準が違うのである。
 自分のしたことを高く買ってくれなければ、存在しても意味がないと考えるのが僕なのである。何をしなくても一生暮らせる環境にあるあなたとは違うのである。

 ヱヴィスを飲み終えてしまった。ヱヴィスをもう2本と安定剤と睡眠薬で今日は終わる。
 それで明日がやってくる。そのために近くのコンヴィニへ、嫌いな夏の夜へ出て行こう。
 明日のY校での個別指導を充実したものにするためにも。