2018.08.10-11

 仕事部屋にしている四畳半の部屋の畳の上に、なにやら何かが粉砕したような灰色の欠片がパラパラと落ちていた。いくつかその欠片をひろい上げゴミ袋に放り込んだ。そこではたと気づいた。椅子の脚に付いているキャスターを覗きこんだ。

 気づきは当たっていた。五つあるキャスターのうちの一つが破砕し、プラスティック片が散らばっていたのだ。経年劣化は致し方ないとはいえ、長年の相棒も疲労と老化をきたしていた。オークションで中古のこの椅子を手に入れたのが約十年前だったろうか。少なくとも、かれこれ十五年は働いてきた計算になる。

 かといって新しい椅子を導入できる資力はない。心の奥では、長く使っているこの椅子と同じメーカーの椅子にとても興味深い一品があるので、それを調達したいという思いが渦巻いてはいるが……。形あるもの必ず壊れる、のだから。そう考えていたら、昔、引っ越しをするため余剰となった椅子を業者に二束三文で買いたたかれたことを思い出した。ウィルクハーンのピクト。曲線が美しい椅子だった。そのときは泣く泣く売った。二束三文の金と引き換えに。

 今夜は仙台がアウェーでの試合をものにした。近くに住んでいながら諸々の事情で観戦できなかった。しかし仙台が勝ったことで、椅子の一件ぐらいで落ち込んでばかりもいられないな、と。


 ―― チェアとソファじゃ大分違うが。

 イニエスタがゴールを決めたというので、見てみたら……すごい。パスの出し手のポドルスキも。子どもたちへのよいお手本になった。一瞬、Jリーグが違うリーグになったかと思えた。……神戸というクラブ、あまり好きではないのだが。


 「ピクト」の画像をウェブ上からピックアップしてきた、というか、ショップリフター。僕はただ単に自慢したがり屋なのだ。肘掛け部分は木製で、その意匠と造作がとてもいい。座り心地は仕事向きではなかったが、この椅子に座るたび、何かホッとしたのをいまも記憶している。(仕事は不出来なくせに、道具だけはいっちょまえ)


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