気づきは当たっていた。五つあるキャスターのうちの一つが破砕し、プラスティック片が散らばっていたのだ。経年劣化は致し方ないとはいえ、長年の相棒も疲労と老化をきたしていた。オークションで中古のこの椅子を手に入れたのが約十年前だったろうか。少なくとも、かれこれ十五年は働いてきた計算になる。
かといって新しい椅子を導入できる資力はない。心の奥では、長く使っているこの椅子と同じメーカーの椅子にとても興味深い一品があるので、それを調達したいという思いが渦巻いてはいるが……。形あるもの必ず壊れる、のだから。そう考えていたら、昔、引っ越しをするため余剰となった椅子を業者に二束三文で買いたたかれたことを思い出した。ウィルクハーンのピクト。曲線が美しい椅子だった。そのときは泣く泣く売った。二束三文の金と引き換えに。
今夜は仙台がアウェーでの試合をものにした。近くに住んでいながら諸々の事情で観戦できなかった。しかし仙台が勝ったことで、椅子の一件ぐらいで落ち込んでばかりもいられないな、と。