2017.09.16

 ついていない日とは、こういう日なのだろうか。

 人生において4度目の抜歯をした。4度目はスムースに事が運ばなかった。医者が歯肉から歯を抜く際に、どうも歯根の片方を歯肉の中に残してしまったらしいのだ。しかも奥の方に。それからが大変だった。いくら麻酔をしているとはいえ、歯肉に空いた穴を拡げ、道具をとっかえひっかえ、そして手を変え品を変え、残してしまった一方の歯根を抜き出すのに悪戦苦闘する医者に付き合わされるのは、たまったものではない。唇はあらぬ方向へひん曲げられ、冬でもないのに唇が割れそうな気がした。鉄を舐めているような独特さがある血の味を味わいながら、僕はただ、治療台の椅子の上で仰向けの伸身状態のまま目をつむっているほかなかった。

 それからいくばくかの時間が流れ、彼はようやく例のブツを僕の口腔から取り出した。

 今日も右足は僕の思い通りに動いてくれない。痺れも感じられるようになってきた。〔了〕