glasses

【眼鏡】
 ここ二、三年、老眼がとんでもない速さで進行中である。ただの老眼ならば許容できる余地はあるのだが、パソコンを使っての教材作成や小論文の添削をこなしているうちに、乱視になり、それに伴い、これまではくっきりと見えていた世界がぼやけて輪郭を失くしていくのである。
 慣れてはいない、初めて経験する世界の見え方が我が身体の変化、老化から始まっていると思うと、暗澹たる気持ちになったり、人生もここまできたかという感慨に耽ったりもするのである。
 この変化を経験したからだろうか、昨年くらいから眼鏡フレームをコツコツ集めていたのである。ヤフオクから、フリーマーケットから、アンティーク・ショップから、潰れそうな眼鏡店から、安売りが売りの眼鏡店から。
 そんなこんなで集めたフレームに先週、遠近両用のレンズを入れた。遠用と近用を分けてかけ替えながら世界を泳いできたのだが、それも面倒くさくなり、遠近両用にシフトしようと思っていた次第である。
 そして、今日から遠近両用の眼鏡を実戦投入した。
 ダ、ダメだ……。視野は狭くなるは、見ようとする世界を構成している部分部分がひしゃげて網膜に映し出され、それらにピントを合わせようにも遠近両用レンズ初学者の性からなのかなかなか合わせられず、眼鏡を使いこなせない。
 〈メガネ男子〉への道のりはかくも険しいものらしい、ということが身に沁みて分かったのである。