a grandmother's deathday.

  2月6日は祖母の命日だった。
 僕は祖母が生きた年月の半分を重ねたが、
 何事もどうにもならず、いまだ風呂無しアパート住まいだ。
 そんな所で祖母の冥福を祈った。
 心底申し訳ない気がする。

 小さな板に書かれた祖母の戒名を、
 入れ替え式の戒名入れの一番前に出した。
 祖母が好きだった菓子パンを遺影の前に供えた。
 灯明を点け、線香をあげた。
 
 祈った。

 それ以外、何もできない自分がいた。
 この空虚感はなんなのだろう。

 ただ、祈った。
 それだけだった。

 日々は爪を立てて僕を背中から急かすけれど、
 祖母への祈りの時間だけは、
 ただただ、何もなく、
 空白の時間だった。
 
 合掌しているあいだは、
 何かが空白を呼んでいるのだ。

 きっと。
 どこからか。