what cats mean.

 朝方、近くの小さな神社へ初詣に行った。
 人間嫌いがさらに進行中の僕は、人ごみを避けるためにこの時間を選んだ。
 思ったとおり、境内は閑散としていた。

 途中、白と黒の斑の猫と出会った。
 陽だまりで背中をうねうねと地面に擦りつけている。
 いつものようにその姿を写真におさめる。
 しばらくその様子を見ていると、顔をこちらに向けて「にゃぁ」と言った。
 その顔に右目はなかった。はじめはオッド・アイかな、と思ったのだが、よくよく見ると、やはり右目がない。
 新年早々、僕の実家のある地方の英雄、伊達政宗のような猫に会ってしまった。
 政宗も〈独眼竜〉と称されたように、右目がない。
 何かを知らせるために、そこで待っていたのだろうか。
 そんな気分になってしまった。
 「その子、生まれつき目がないのよ。他の子はもらわれていったのだけど、この子はね……。もうひとり兄弟がいるんだけど、どこかしらね」
 その猫に餌をあげていたお婆さんはそういいながら、そのもう一匹を探していた。
 骨ばった、ちょっと固めの毛で包まれた猫の身体を撫でた。
 ちょっと嫌がりながらも、撫でさせてくれた。
 おばあさんを見る目は、そこに存在しないにもかかわらず、とても優しそうだった。
 その後、家へ戻るおばあさんの後をひょこひょことついて、歩き去ってしまった。
 その後姿がなんとも言えず、愛しかった。
 その愛しさの前には、言葉は無力だ。

 祈りを捧げたが、何も願わなかった。
 ただ、銭を投げ入れて、鈴を鳴らして、礼をして、拝んだ。
 なにか、それでいいような気がした。

 帰り道、また片目の猫にあった。
 陽だまりでうとうととしていた。
 その近くには兄弟だろうか、体系のよく似たロシアン系の雑種がいた。
 またその帰り道には、尻尾の短い雉虎の猫がいた。
 しばらく歩くと、緑色の首輪をつけて車のボンネットに正座する三毛の雑種がいた。
 みんな、愛しかった。

 みんなに出会えたのは吉兆なのだろうか。
 それとも警告なのだろうか。
 それはこれからも生きていればわかることであって、いまこの瞬間にわかる必要なんてない。

 今日の一曲:『世界の終わり』 by Thee Michelle Gun Elephant