2018.05.24

 帰り道の電車の中でのこと。
 進行方向右側のベンチシート右隅に座っていた僕は、向かい側に座って、遠くの地からいま帰ってきたような荷物を足元に置き、ハードカヴァーの小説を読んでいた女性の顔を見た。
 ――レイ・デイヴィスに瓜二つだった。
 「世界には自分に似た人間が3人いる」、人口に膾炙する箴言だが、それを地で行く邂逅だった。だが、ウォークマンで聴いていた音楽を、ザ・キンクスにチェンジすることはしなかった。