2017.09.14 - condition

 "gadget"の欄でさんざん称賛してきたUPA-F10だが、メインヴォリュームの調子があまりよろしくない。通常、ヴォリュームノブを何回かグリグリと回すと左右のバランスのとれた美音を鳴らしてくれるのだが、今日の朝はなかなかその域に達しなかった。人間同様、機械はさらに、寄る年波には抗えないということなのだろうか。

 僕は徹頭徹尾、私立文系を突き詰めたような人間だから、とんと機械のメンテナンスに疎い。そればかりか自分自身の心や体のメンテナンスにも疎い。今朝はそんなことを考えさせられるような日の始まりとなった。

 今は、アンプの調子も少しは落ち着き、抹茶を飲みながらカーメン・マクレエを聴いている。

 いい音だ。いまの僕の社会的身分からすれば贅沢だと言ってもいい。オーディオマニアからは鼻で笑われるだろうが、それがなにか? 彼女の歌はBOSEのスピーカーでは味気なくなる。「末っ子」とはいえ、4312MⅡで聴くとカーメンの歌唱だけではなく、ジョー・パスのギターの胴鳴り、会場の雰囲気が実体として、その出音から伝わってくる。――まぁ、多分に己の嗜好の問題なのであるが。


Carmen Macrae - Day By Day

〔つづく〕
〔承前〕
 今日の仕事で使うプリント類の編集を終えた頃、10時30分頃、先日の某オークションサイトサイトで落札したアンプリファーとCDプレイヤーが届いた。デノンのPMA-7.5LとDCD-7.5L。ゆうパックさんが差し出した伝票に、さも決められた所作をなぞるようにシャチハタで受け取り確認の判を押す。重い荷物なので玄関先にそのまま置いてもらった。僕はそれを脚でドアが閉じないようにしながら屋内へ運び込み、とりあえず台所においた。次は開封だ。

 逸る期待を胸の奥に閉じ込めて、シールドされた段ボール箱の扉を開けた。……残念なことに、これら2つの「精密機器」が梱包されていた箱の下段にはなんのクッションらしきものが見当たらなかった。これでは、いくらエアパッキンでモノを包んでいたとしても、輸送時のショックがモロに機材へと伝わってしまう。なんともはや。

 気を取り直し、2つの機材を包んでいるエアパッキンを取り去った。外観の程度は中の上といったところか。店側がおろそかにしていたと思われる外観を見て、タオルを少しだけ湿らせ汚れを拭き取っていく。そして、ひとしきり汚れを吹き終え、セッティングに入った。

 CDプレイヤーを一番下に置き(振動を抑えるため)、その上にアンプを、さらにその上にSONYのUSB-DACアンプリファーのUDA-1を置いた。UDA-1の音はとても良いと思うのだが、いかんせんスピーカーをドライヴする力に欠ける。その点が長年引っかかっていたのだ。我慢をしていたものの、ここ1か月で堤防が決壊した。「この机上にある2組のスピーカーはもっとポテンシャルがあるはず」という犬も食わぬ思い込みから、生活の資にはなり得ない想像を巡らせていった。「ONKYOはクリア過ぎる」「SONYはサイズ的に机上に設置できるガジェットがない」「YAMAHAONKYOと同じく、僕には薄く感じてしまう」「BOSEはスピーカーで楽しむ分には良いが、アンプとなると原音ではなく"BOSEの音"になってしまう」等々……。

 そうこうして残ったのが、以前2回目の同棲をしていたとき、渋谷のビックカメラ(たしか上階に映画館がある方)でさんざん持参のCD(たしかTeenage Fanclubの『Songs From Nothern Britain』)を聴き倒しながら選び、買って、そして使った経験があるDENONだった。DENONの音は原音に忠実だと思わせておいて低い重心を感じる音を鳴らしてくれるなぁ、という記憶があった。だったらもう一回店に行って試聴すれば?――生憎僕のデフォルトは出不精(ポジティヴな引きこもり)で、新品を買う金はない。自然、オークションサイトを通じセコハンを手に入れて、人柱的買物をするのが僕の性なのだ。

 話が明後日の方向へ行ってしまった。

Anita O'Day & Cal Tjader - Thanks For The Memory


〔つづく〕
〔承前〕
 今日の仕事は、テンポが速すぎて相手には理解しづらかった、あるいは、相手は僕についていくのが精いっぱい、または、それすら諦めてしまった人もいたかもしれない。しかし、この世界で生き残るにはこのテンポで物事を捉え、考えることが求められる。――今晩はいつになくポジティヴな僕だ。(了)