台風12号、西進す。
膝よりも痛いのは、意識である。何でもないシチュエーションで転倒した基底にある自分の老いを意識せざるをえない。
2018年のフジ・ロックフェスティヴァルは二日目。グリーン・ステージには大学時代に所属していたサークルの先輩にあたる某氏が率いるバンドが登場だ。観たい、が、金はない。若さと仕事の大半を見失ったいまの自分に、ただただ、腹が立つ。苗場の会場を夢想する。そこは、世界最後の、バンド演奏による音楽がメインのフェスが行なわれている場所。最後に残った桃源郷かもしれない地。
そうか、彼はかのジョニー・マーと同じステージで演るのか。なかなかに感慨深い。そんなふうに意識を穿ちながら、才能があり、ハードワークができ、その上で運に恵まれた人々を自分はモニタで眺め上げる。とっくの昔にケリをつけたこととまた少しだけ向き合う。昔のようにそのテーマで心が千々れることはもうない。
これを聴き、眺めつつ、日々の糧を得るための活動にいそしむ。ハレもケもない。こうやってハレが日常に入り込んでくる時代になったのを、ついでに知る。いやはや、歳をとったものだ。
雨が降り止んだかの地の夜はフィッシュボーンのステージに続いていく。
あす歩く道は水戸へと繋がっているはずだ。そこには初めて出会う人々がいる。そんな人たちと一緒に仕事をする。それもまたいいではないか。