2018.07.28

 台風12号、西進す。

 膝が痛い。正確に言うと、右足の膝下が痛む。一昨日、自転車で転んだ際、アスファルトの路上にしたたかに打ち付けてしまった。膝頭の表面は擦過傷を負い、そこは少量の血液が滲んて固まっている。その下の部位は腫れている。患部をヴィニール袋にいくばくかの氷の塊を入れ、そこに瓶から食塩をふりかける。それをもう一枚のヴィニール袋に重ね入れ、患部に当てる。そうすることが、いま、自分にできる限りの手当てである。ロイヤルタッチには遠く及ぶべくもない。

 膝よりも痛いのは、意識である。何でもないシチュエーションで転倒した基底にある自分の老いを意識せざるをえない。

 2018年のフジ・ロックフェスティヴァルは二日目。グリーン・ステージには大学時代に所属していたサークルの先輩にあたる某氏が率いるバンドが登場だ。観たい、が、金はない。若さと仕事の大半を見失ったいまの自分に、ただただ、腹が立つ。苗場の会場を夢想する。そこは、世界最後の、バンド演奏による音楽がメインのフェスが行なわれている場所。最後に残った桃源郷かもしれない地。

 そうか、彼はかのジョニー・マーと同じステージで演るのか。なかなかに感慨深い。そんなふうに意識を穿ちながら、才能があり、ハードワークができ、その上で運に恵まれた人々を自分はモニタで眺め上げる。とっくの昔にケリをつけたこととまた少しだけ向き合う。昔のようにそのテーマで心が千々れることはもうない。

 これを聴き、眺めつつ、日々の糧を得るための活動にいそしむ。ハレもケもない。こうやってハレが日常に入り込んでくる時代になったのを、ついでに知る。いやはや、歳をとったものだ。

 雨が降り止んだかの地の夜はフィッシュボーンのステージに続いていく。

 あす歩く道は水戸へと繋がっているはずだ。そこには初めて出会う人々がいる。そんな人たちと一緒に仕事をする。それもまたいいではないか。