bye-bye, hello, bye

 今日、今年最後の仕事からの帰り道、いつもの公園に立ち寄った。最近は寒さが増し、猫たちの姿を見ることがなかなかできなかった。
 落ち着いた天気が彼女、彼らを誘い出したのだろう。今日は、ほとんどの猫が顔を出していた。遠目からその姿を眺めながら、煙草に火を点けた。
 一匹の鯖虎の猫がとことことやってきた。僕の座っている独り掛けのベンチの回りをぐるぐると歩き回る。止まったかと思うと、僕の眼にその視線を合わせる。そんな動きを何度か繰り返した。
 相変わらず、僕は猫に餌をやらない。その猫もわかっているだろう。しかし、それでも、何度も、回り続けた。それに合わせて、僕の心も回り続けた。今年一年間にあったことの数々が頭の中に像として浮かんでは消えながらして。
 もう一匹の鯖虎の猫が現れた。兄弟だろう。お互いにちょっかいを出しながら、滑り台の向こうへ駆け出していった。
 猫たちに暦という時間はないだろう。この日、一日が、そして、この瞬間があるだけだ。ただ、それだけ。
 右足が左足を信用していないから、追いかけずにチャンスを逃すんだよ。昨晩見た外国のテレヴィ映画でアラン・ドロンの相手の、名も知らぬ男の役者が口にしていた台詞が頭をよぎった。
 来年は左の胸が右の胸を信じられるように、心も身体も頭も動かしていこう。来年の抱負を聞かれた小学生のように、昨晩の台詞を意訳してみた。
 そのとき、ふと、そのテレヴィ映画が日本語吹き替えだったことを思い出した。少し恥ずかしくなった。

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「今年の一曲」
表:"Fallen Leaves" by Teenage Fanclub
裏:"All Alone Again" by Ally Kerr
  "Waiting For The Sirens' Call" by New Order