何をしても埋まらない穴を内に飼っている。
世界の中で手にとって、耳で聴いて、眼で追って掴めるものは砂のようなものだ。掴んだもので穴を埋める。だけど、さらさらと落ちて、また、元の大きさの穴がぽっかりと姿を現す。仕方がないので、こうしてここに言葉を使って穴を曝してみる。
そうするのは能力のない証拠だ。有能な人はこんなことをしない。昇華する手段を持っているか、それを常に追い求めているからだ。だから、僕のようにこんなことをしている暇はない。どんなに大きな穴をその身の内に飼っているとしても。
穴が開いていない人なんていない。周囲を見回しても、それを受け容れながら、みな自分のために努力をしている。僕はその人たちを尊敬している。素敵な人たち。僕の穴なんか、その人たちに比べたら、ちっぽけなものだ。
僕のように無能な人間は、こうしていくつになっても、役にも立たない言葉をうじうじと書き連ねる選択をするしかない。象徴化する能力がないのだ。
過去に穿たれた穴は穴として受け容れなければならない。それはずっと引き摺っていくものだから。折り合いをつけなければ、先へ行けない。
ただただ、僕は赦してほしい。あなたに赦してほしい。生活という、あわただしくもゆるやかに続いていく時間の中で、赦してほしい。それは言葉でもなく、声でもなく、味でもなく、空や雲でもなく、雨や雪でもなく、風でもなく、音や形でもない。それらがもたらすのは、期間限定の赦しだ。すぐに消えてなくなる。穴が開いていることを、無能であることを、どうしようもない人間であることを赦してほしい。流れていく時間の中で。心臓が刻むテンポで。子どものころから飼っている穴を、埋めてほしい。あなただけに赦されたい。
でも、この頭の中で繰り返される呟きは、ただの甘えだ。見苦しい、ただの甘えだ。単なるええかっこしいだ。胸の中に巣食うざわついた想いを象徴化しきれてさえいない。具象化さえされていない。だから、意味なんかないのです。それをわかっているのに、僕はこうしてキーを叩いてガス抜きをしようとしている、酷い人です。
あたらしい写真を掲載しました。
「今日の一曲」:"Think Of Me Naked" by Rhonda Harris